一人称:私
性別:♀
愛称はリーン。
カジノで働く案内係。お喋りでしょちゅうマイクを独占していたりする。
戦時中に伝令兵として駆け回っていた過去がある。
耐えきれず飛び込んだ海の中から救ってくれた者が居たのだが、その後一度も会えていない。
カジノに集まる情報も頼りに、今でもその者を探している。
▼会話する
「リングリングよ!リーンって呼んで?」
「支配人にも良く通る声だって褒められてるの。ほんとはマイクが無くても飛ばせるのよ?」
「この前、放送室散らかし過ぎちゃって怒られたの。いいじゃない、ほぼ私しか使わないもの!」
■Story
リングリングは海が好きだった
過去の情景
周りと比べて目が良く速く飛べ、良く透る声をしていた私は、伝令兵としてうってつけだったのだと思う。戦う取り柄の無い私には、特に。
初めのうちは良かったのかもしれない。だけど争いなんてものは、長引けば長引くほど戦況が悪くなる一方で、そうしていくうちに、私が伝えに行かねばならない内容もどんどん偏っていった。
●●●●が落ちた。●●●区域の半数がやられたから救援を。東の●●●が孤立した。物資が届かない、見つからない、襲撃に遭い消滅した。支援部隊の●●●が行方不明になった。●●●達が帰ってこない。伝令先の駐屯地が無くなっていた。●●●の隊長が死んだ、もうどうにもならない。こっちはもう保たないから●●●●に伝えてくれ。●●●●達は全滅。手が無い。間に合わない。●●●も全員●●●●。
何処で。誰が。
どうして。どうなって。●●●●●●。
争いが終わった時、ふらふらと彷徨いながらもようやく帰還した私に仲間達がかけた言葉は、
「次は何処がやられて、誰が死んだの?」
だった。
どうやらいつの間にか、凶兆の目印にでもなっていたらしい。一斉に仲間たちから向けられた恐怖と怯えの視線に耐えきれず、私は何処かへ飛び出した。
どこまで遠くに走って飛んでいったのか分からない。
海が好きだった。空の上から見る海の景色が大好きだった。気が付けばたどり着いていた海は、争いの跡でそこはかとなく荒れてはいたけれども、透き通る水と静けさがとても美しく感じて、それで、
「あぁ。もう、いっかあ」
海は思ったほど冷たくは無かった。日の熱でどこか生温く、それが体温に溶けていく感覚がむしろ心地良く感じた。酸素が消える息苦しさよりも、薄れる意識の傍らで、もう何も考えなくて良いのだという安心感が勝って、ゆっくりと目を閉じる。
水面の先の遠くから、誰かが叫んでいるような気がした。
けれどもう、どうでも良いことだろう。
…深海魚を探して
それからゆっくりと、まるで何かの流れに戻すように。
とん、と背中を押された所で、リングリングはパッと目を覚ます。
見上げていたものはもう海ではなく、自分の見知った景色の空だ。
身を起こすとそこは飛び込んだはずの海の浜辺で、怪我の一つもしているかと思った体には、どこにも何の異常も無かった。
「そうだ、私のやるべきことをやらなきゃ」
立ち上がってからの彼女の行動は早かった。
戦争が終わろうとも、知らせを欲する人は必ずどこかに居る。リングリングはそこら中を飛び回り、伝えるべき知らせを、報告を、現状を。必要とする者たちへ届け続けた。
どんな顔をされようとも、どんな言葉をかけられようとも、声を響かせ飛び回り続けた。
そうして、もうどこへ届ける知らせも無くなった頃。
およそ戦友と呼べるような人も居なかった彼女は、元居た隊に戻ることもせず、そっと姿を消して旅立った。
鏡でボロボロだった自分の姿を改めて見ると苦笑いしか出て来ず、せっかくだからと目一杯綺麗に整えて、大好きな海を巡る事にしたのだ。
そして海に関わる者たちを見つけては、深海で迷子を案内するランターンを知らないかと、そこら中を聞いて周った。
しかし、誰もそんな存在は聞いたことが無いと、口を揃えて言った。
自分の見たものは、あの場所は。
あれは果たして現実だったのだろうか、それとも自分にとって何か都合の良い夢を見ていただけだったのだろうか。
それでも、リングリングは確かに覚えていた。
自分の背を押した手の暖かさと、暗闇を照らすあの光の優しさを。
「……私まだ、ありがとうも言えてないもの」
そうして彼女は、再び旅立つ。
明るい場所で見つからないのなら、あの暗くて深い、しかし淡い光もあった深海のような場所へ。
変わった情報も集まるであろう、人のたくさん訪れる場所へ。
祈りと希望と、そしてほんの少し高鳴る鼓動も胸にして。
「あのあの!人手が足りないって噂に聞きました。
……案内係なんて、雇ってみたりしませんか?」