夢見る者達の

■登場人物


■あらすじ
ある夜、月影は自身の異変に気付きルミナスの影から飛び出した。星の巡りの悪い日だった事が災いしたのか、抑えられていた力が突然暴走を始めたのだった。
屋敷の皆に危害を与えないよう月影は力を自身の中に無理やり押さえ込んだ結果、彼女自身が悪夢の中へと落ちてしまった。
 
「探しに行きましょう、悪夢の根源を」
 
ルミナスは月影を助けるべく、ティアーを連れ共に月影の夢の中へと潜っていく。
深い深い悪夢の奥底で見たものは、彼女の過ごした過去の世界だった。


■会話の記録

「悪夢……。教示、危険な可能性のある未来、後悔や懺悔。確かに見るのは恐ろしいかもしれないけれど、そこから得なければならない気付きが必要な人はね、たくさん居るの」
「私は、私は奏者なのに。それなのに、もっとちゃんと出来なかったから……」
「見た通りだ。今更どうしてこんな過去に囚われるのやら、己にも分からん」


えんでぃんぐ

彼女の過去から見たもの。
月影はもう一人の夢の理、本来ならばルミナスと共に在るべき存在だった。
 
ルミナスが吉夢を与える存在ならば、月影は夢を通じて教示を与える存在であった。時に人々にとって恐ろしくもあるその夢は、いつしか悪夢と呼ばれるようになっていく。
月影から与えられる夢に耐えきれなくなった新月島の人々は、彼女は”悪夢を振りまく存在”なのだと、月影を敵視するようになってしまった。
事態は一変。
月影は、新月島を追われてしまうこととなった。
 
「歪んだ欲望で神域から理を追い出せばどうなるか。残ったのは穢れだけだ。神域に充てていた力の一部が穢れになれば、己自身の在り方も変質してしまった」
「だから貴方は、自分の意思に関わらず悪夢を振りまいてしまう存在に、本当に成ってしまったのね」
 
彼女の夢の中を歩き、彼女の過去を知ったルミナスとティアー。ルミナスは月影に、今でも人をずっと恨んでいるのかと問う。
 
「……人は勝手だ。だが恨みとは違う、元よりこうなるのも時間の問題だった。ただ、哀しいだけだ」
 
それが月影の本心であった。
月影は自分がこのまま目覚めなければもう悪夢を振りまく事も無いのだろうと言う。
自身の夢の中に彼女たちを居させることも、これ以上悪夢の制御で自分に付き合わせる事もこれで辞めだと、二人を夢の中から追い出そうとした。
しかしそれは叶わず、ルミナスは月影を抱きとめ、ティアーもそれに続いて月影の腕にしがみつく。離せと二人を振り解こうとする月影を無視して、共に屋敷へ帰るのだと叫んだ。
 
「貴方がこんなことになる前に、貴方を見つけられなくてごめんなさい」
「私まだ、まだ、月影様と全然お話出来てないです!奏者ももっと頑張ります!だから……!」
 
必死の説得で観念したように月影から体の力が抜けた事をルミナスは感じとる。もう何も言わず目を閉じた月影と、わんわんと泣き叫ぶティアーもまとめてしっかりと抱きしめて、夢の中から全員を引き上げたのだった。
 
—-
 
月影は目を覚ますと、自分を愛おしそうに見つめるルミナスがすぐに目に入った。膝枕をされそのままゆっくりと頭を撫でられているが、彼女の手は心地よかった。
 
「夢を見ていた」
「そう。どんな?」
「最低な夢だ」
「……」
「だが悪くは無かった。お前たちが居た気がするから」
「あら珍しく素直ね。まあ、私たちが居るなら当然だわ」
 
ふん、と鼻を鳴ら月影は起きあがろうとしたが、なんとなく自分の体の重みに気付き目線を落とすと、ティアー体に寄りかかってぐっすりと眠っていた事に気付く。
普段なら寄り付かれることを嫌がる月影だが、起こしもどかしもぜず、そのまま深いため息をついて「もう少し眠る」と諦めたように目を閉じた。ちょっとこの体勢そろそろ疲れるのだけど、という声を無視して。
 
「……おやすみなさい。今度こそ良い夢を」