■登場人物
■あらすじ
「今この世界が一体どんな様をしているのか。見て回り、見て、回り……主に、伝え……?あれ、どうするんです?」
突如として大地に降り立ちゆっくりと目を開いた白き神の分身、名をコモドヴァーチェ。しかし何故か、自分の役目を薄ぼんやりとしか思い出すことが出来ず、主たる存在と交信することも出来なかった。
世界の情報や状況すらまったく分からない中で途方に暮れ彷徨うことになってしまった彼女は、辿り着いた街の食事処で意図せず無銭飲食をしてしまう。
問答無用で警ら隊に引き渡されそうになったその時、三人組の女性たちが彼女の代金を肩代わりすると名乗り出た。
お礼を言ったも束の間、コモドヴァーチェはあれよあれよという間に彼女たちに連行されてしまい、気付けば街の少し外れにある大きな農場に居た。
「っしゃー!労働力ゲット!」
「働かざるモノ食うべからずだわ!」
「というわけで、食べた分はここで働いてもらうからあ」
三人組のソラ、ミレー、シーファらに押し切られれるように彼女は気付けば鍬を持たされ、収穫祭の日まで農場を手伝うよう命じられる。
神の分身の行方や如何に。
■会話の記録
「いや、違うんです!私は白き神たる主にこの世界を見せるために……えええ寝言じゃないですって!本当なんです!」
「あんたホントに何にも知らないのね?」
「土も水も空も無ければ生きていけないのは、私たちだって同じだよお」
「世界に生きているのはー!あたし達だけじゃなーい!」
えんでぃんぐ
街の人々からの協力もあり、四人は無事に祭までに収穫を終える事が出来た。収穫祭自体の準備は、後は任せてという街の人々に甘えて彼らは少し休憩をする。
仕事の後、四人だけで広い農場のど真ん中に寝転がり夕暮れがかる空を見上げていた。
鍬を持ち、土を触り、実りに想いを馳せ過ごすそんな日々を思い返し、ドーチェは一人上の空になる。
ドーチェは人が多い街へ行けば、今の世界の在り方などすぐ分かるはずだと思っていた。作物と触れ合う中で、世界は人だけでなく自然も共に生きているのだと、散りばめられた生命の繋がりを改めて実感したことを三人にポツリポツリと溢すと「あんたやっぱり何も知らないのね」「あんなに土触ってて今頃!?」「生命の流れがあるのは当然だよお」と散々な言われように苦笑いした。
「そういえば、あんたが言ってた主?とは連絡とれたのかしら」
「それが全く……。でも、何だか見守ってくれてはいるような感覚なんです」
「まあよく分かんないけど、じゃあこれからもよろしくって事で!」
「神様?にも、農業たくさん教えてあげよお」
ひとまず、今日はお疲れ明日も良い日だ!と、ソラの合図と共に四人でオー!と拳を空に向かって突き上げた。
そういえば本来の目的はもっと世界を見て周る事では無かっただろうかとドーチェの頭に一瞬よぎったが、今はこの時間を楽しむことにしようと静かに目を閉じるのであった。
「いやこれからもよろしく……って、そもそも私こんなに働かねばならないほど食べましたっけ。」
「だってドーチェ、初日にトラクター破壊したじゃん」
「え」
「やっぱり分かってなかったのかしら」
「ま、」
「借金返済タイムに入ってるよお」
「……そ、そんなあーーー!!!」
世界を周る旅は、まだ遠く。
★ex.episode
遠き地より
一つの静かな空間で、その白き存在は閉じていた目をゆっくりと開いた。そして、
「……あーはっはっは!まさか!まさか無銭飲食の挙句、農業にまで従事することになるとは!確かに少し調整が上手くいかず申し訳ないとは思ったが、我が分け身ながら阿呆も良いところ!」
白き存在。世界を創りし、創世の白き神とも伝えられているその存在は目を覚ましていた。
お伽噺とは違って。
目覚めてしかし力はとても不完全で、まだ当分この場所から動くことも出来ないだろう。
だから時折見える夢の隙間から静かに世界を見据えていた。
自身の分身、分け身を作り世界に降り立たせることで、その分け身を通じて。
「あーちゃんただいま!」
「おや戻ってきたのか」
この綿毛の子も、分け身の一人だった。
動けぬ自分が自由に飛びゆく綿毛に想いを馳せたとき、出来た分身はその姿になってしまっていたし、なにより自由であることの願望が大いに反映された。
もはや分け身というより独立した存在にも近いその子は、今や一人の友人のような存在となっている。
「いろんなお話持ってきたよー。あとねー、別の所でお揃いなお友達も出来たりしたのー!」
「そうかそうか。鍵も上手く使ってくれているようで何より」
そうして二人は笑い合う。
神はふと、自分の脳裏に過ぎったもう一人の分け身が見る景色に気付き目を閉じる。満点の星空の下、干草に四人で寝転び、何か散々文句や悪態を言われてるような、そんな景色だ。
その光景にくすりと笑って、神は再びゆっくりと目を開けた。
「夜明けはまだ来ない。だから朝が来るまで、ゆるりと語り合おう」