モルヴェルーカ

一人称:あたし
性別:♀寄


死の理。古書堂の店主で、魂司る者。
愛称はヴェルカ、古本お姉さん。
役目を終えた命を回収し元の場所へ還す事を生業としていたが、大昔は多く死者が出る事も稀では無かったためその回収する姿を見た者が「大きな鳥が人々の命を奪い去っていた」と勘違いし、伝説として残ってしまった。
憤慨した彼女が暴れ回ってしまった事もあり、余計に伝説に残る。
貧乏くじを引きがち。
 
神珠に諌められてからはすったんもんだあって街で暮らしている。実のところただの不器用な優しい姉ちゃんなので案外すぐに馴染んだ。
死者の魂が迷わぬよう古書堂の洋燈を灯し続けながら、本のページを今日も捲る。


▼会話する
「モルヴェルーカ。うるさいから静かにしててくれる?」
「モード?この古書堂自体があたしの殻みたいなものよ。まあ本は方々から集めたり勝手に集まったりした物だけど」
「ていうか何であたしが街に居て、あいつは森で隠居なのかしら。セオリー的には逆じゃない?」

▼蒼いせいけんの事

「……神珠のこと?はぁ、今頃どこで何やってんだか。あれがくたばってるとは思わないけど、ま案外元気にやってんじゃないの」


■Story

鳥は降り立った

曰く、彷徨える魂が影響し吹雪が止まなくなっているのだと、雪原の王に呼ばれてヴェルカはその地に訪れた。
真夜中の雪原で吹き荒ぶ風と雪の中を廻り魂は回収こそしたが、その数は吹雪が止まなくなる問題が起きる程ではなかった。
一体なんで自分を呼びつけたのだと一人彼女が悪態をつき始めた時だ。
何か複雑な気配を感じ取ったヴェルカは、山の中腹にある大きな屋敷の庭に降り立った。
 
「邪魔するわよ」
 
それだけ言って、庭から屋敷の中へずかずかと入った。
突然の来訪者に屋敷の中はもちろん大騒ぎだ。
彼女が理であることを知ってか知らずか、その気配に負けて腰を抜かす者、逃げ出す者、何とか止めようと後を必死で追いかける者など。
様々居たが、その全てを無視してヴェルカはすたすたと歩いていき、ある部屋の前までたどり着いたところで足を止めた。
部屋の襖には、何かまじないの様な文字が書かれた札がこれでもかと言うくらい大量に貼られていたのだが、
 
「どうしてその部屋に、そこに居るのは呪いの子で……。あの、お願いですからお引き取りください!一体何を」
「原因ここね。札邪魔くさすぎ」
 
後を追いかけてきた屋敷の者の声も、貼られている札も、やはりそれら全く無視してヴェルカは襖をこじ開けた。
 
中に居たのは、小声で何か話し続けている少女が一人と、たくさんのその他諸々。
突然開け放たれた襖の方へ、少女だけが驚いて顔を向けた。
 
「あー、今時そんなに霊感あるやつなんて珍しいわね。なるほど、こいつに集って積もったと」
 
ヴェルカは袖を大きく広げ、鳥の翼の様になったそれは部屋に居た少女以外のその他諸々を包み、自身の中へあっという間に取り込んでしまった。
少女は言葉を発する間もなく、目の前で起きた事の理解が追いつかないまま呆然とヴェルカを見つめ、今までヴェルカの後を何とか追いかけていた者は、伝説に残る死鳥の姿を目の当たりにし腰を抜かしてばたりと尻もちをついていた。
 
外の吹雪は、もう止んでいた。

鳥は持ち帰った

掠れた声で、届いたかも分からない声で、待ってとその人を呼んだ少女は、屋敷から飛び出して部屋に居た者たちを持っていってしまった彼女を追いかけた。
長い間ろくに部屋から出られもしなかったせいで、なんとか追いつき彼女の袖を掴んだところで体力も尽きてしまい、そのまま傾れ込むようにして雪原に膝をついた。
 
「なによあんた。あそこに居たやつじゃない」
 
何か用?とつい先ほどまで屋敷に侵入していた彼女、ヴェルカは溜息混じりに言う。袖を掴まれたままなのも気にも留めておらず、ただ少女を見下げた。
 
「お話し、してくれる人たち、あの人たちしか、居ないの……。お、お願いです、返して、」
「せっかく生きてて足ついてるやつが、死んだもんに縋ってどうすんのよ」
「……っ私にしか見えてなかったの、でも、私にとってはそんなの、関係なくて」
「そ。じゃあいつまでもああしてるつもりだったの?」
 
そうはっきり言われ少女は黙り込む。
少なからずわかってはいたのか、気が付かないように目を背けていたのか。
吹雪の止んだ真夜中の雪原は酷く静かだった。
沈黙の中、ヴェルカはちらりと屋敷のある方向に目をやったが、誰も彼女を追いかけて来る様子も気配も無いのだから、やれやれと肩をすくめた。
特異な力の持ち主に対するあれこれなど、いつの時代も大して変わらないものかと、少しばかり遠くを見て。
 
「はぁーーー、あんた本は読める?」
「……?本、は、読めます……っ!?」
「ちょっと、靴も無いわけ?ユキノオーにしたってそれはどうなの」
 
ヴェルカに片手で担がれてしまった少女はそのまま歩き始めてしまった彼女に少しばかり抵抗を試みた。
しかしそんな体力も残っていなかったせいで、すぐに力無く担がれるままになってしまったが。
 
「放っておいてもあんたまた魂集めちゃいそうだし、勝手に集まりそうだし。それでまた呼びつけられるのも面倒なだけだから」
「な、何を、するんですか」
「あたしの手伝い。ちょうど手も欲しかったのよね。別に嫌なら今すぐ帰っていいけど?」
 
少女は少しばかり考えたが、何かと思うところもあったのだろうか。
戻らないという意志で首を横に振ったのが見え、ヴェルカは何も言わずそのまま歩き続けた。
こうして彼女たちは夜も明けない星空の下、雪道をざくざくと踏んで歩く。
担がれたまま、これからどこに行くのだと少女は小さな声で聞いてみた。
ヴェルカはそうねと少し考える様にしてから、ふと何か思いついたように雪原の遥か向こう側を見た。
 
「ちょっと癪だけど、森で靴作ってる馬鹿がいるから。まずはそっち」